ステンレス鋼の基本|日本水道協会検査工場のステンレス製ボルト、ナット、ネジを取り扱っております。

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ステンレス鋼の基本

ステンレス鋼の基本特性についてご説明いたします。特徴、成分、性質、磁性など掲載しております。

ステンレス鋼の基本特性

今日ステンレス鋼は、その特性即ち耐食性、機械的性質等が優れておりこの為多くの人々に愛される鋼となったが、一般的には特別な鋼と考えやすいが、鉄が成分の大部分であることを忘れ易い。 即ち鉄にクロムやニッケルを加えた合金鋼で、クロムを13%加えた物が13クロム鋼であり、クロムを18%加えた物が18%クロム鋼であり、この18クロム鋼にニッケルを8%加えた物が18-8鋼となる。

この3つの鋼
13クロム鋼
18クロム鋼
18-8 鋼がステンレス鋼の基本となっている。

この基本をよく理解されることにより、ステンレス鋼のより有効な利用が図られる物であります。

ステンレス鋼の基本特性

ステンレス鋼製ねじ部品について

ステンレス鋼製のボルト、ナット、小ねじ、タッピングねじ等各種ねじ部品は耐食性が要求される用途のみならず、耐熱性や低温まで靱性を保持しなければならない。
材料の選択には使用上要求される条件に加え、鋼種の性質、加工性、その価格等が考慮されなければならない。ボルト、ナット、小ねじ類に使用される代表的ステンレス鋼とその性質を次表に示す。

ボルト・ナット・小ねじに使用されるステンレス鋼

JIS規格によるステンレス鋼
製耐食ねじ部品の機械的性質

ステンレス鋼製耐食ねじ部品の機械的性質についてはJISB1054=1985に規定されている。
この規定はオーステナイト系、フェライト系及びマルテンサイト系のステンレス鋼を用いて製造したボルト、小ねじ、ナット等の耐食ねじ部品の性状区分並びに機械的性質とその試験、検査及び表示について規定している。
最も広く利用されているオーステナイト系について主要点を抜粋して示す。
(フェライト系、マルテンサイト系は省略)

(1) 性状区分

(例)A2-70 オーステナイト系ステンレス鋼(A2)を用いて冷間加工した引張強さ
700N/mm2{71.4kgf/mm2}以上のもの

50----引張強さ  500N/mm2{51.0kgf/mm2}
80----引張強さ  800N/mm2{81.6kgf/mm2}

(2) 材料

  • (16) 硫黄(C)はセレン(Se)で置換えしてよい
  • (17) 炭素(C)の5倍から最大0.8%までのチタン(Ti)を含んでよい
  • (18) 炭素(C)の10倍から最大1.0%までのニオブ(Nb)とタンタル(Ta)又はそのいずれかを含んでよい
  • (19) 4.0%以下の銅(Cu)を含んでもよい
  • (21) 必要に応じてモリブデン(Mo)を添加してもよい

オーステナイト系鋼種区分と他のJIS規格(鋼材G規格)との関係

オーステナイト系ステンレス鋼
SUS304・SUSXM7について

ボルト、ナット、小ねじ等に使用されるステンレス鋼は多くの鋼種があることはこれまでの説明である程度理解されたと存じますが、とりわけ最も広く使用される鋼種は、SUS304、SUSXM7であり製造実績でも全生産量の約90%がこれら2種類で占められている。
そこで、ここではSUS304、SUSXM7の特性について述べる。

(1) 成分

JISG4303ステンレス鋼棒に次の通り規定されている。

化学成分

市販されている304、XM7の化学成分の一例を次に示す(%)

(2) 機械的性質

JISG4303ステンレス鋼棒に次の通り規定されている。

機械的性質(個溶化熱処理状態)

(3) 冷間加工硬化

オーステナイト鋼を冷間加工(冷間圧造、伸線、切削、ヘッター等)を行うとクロムカーバイトが折出し、オーステナイト組織の一部は、マルテンサイト組織に変わり、硬くなり(強さも大きくなる)磁性も出てくる。この場合冷間加工の加工率が大きくなれば、硬く(強さも)なる程度も大きくなる。
また、この傾向はオーステナイト組織が不安定な鋼種ほど強く現れる。
この硬化を減少させるために、炭素量を少なくニッケル量を多くすると良い。また、銅の添加も効果がある。

ステンレス鋼の加工硬化

これを応用した鋼種がSUSXM7である。
冷間加工によって生成したマルテンサイト組織は溶体化処理(1100℃程度に加熱後急冷)することによりもとのオーステナイト組織に戻る。

上図に代表的なステンレス鋼の冷間加工による強度の変化の一例を示す。
これらの冷間加工によって強度が変化する性質を利用して強度区分を決定したものが即ちJISB1054であり、強度区分50---とは固溶化熱処理状態のまま素材を利用し、強度区分70---とは軽度の冷間加工(伸線)およそ10%前後、強度80---とは冷間加工(およそ20%前後)によって得られることになる。

(4) 磁性

冷間加工によってオーステナイト系ステンレス鋼が硬化することは磁性にも変化がでる。
一般に磁性の強弱を現す単位として透磁率(μ)で示される。
一般的な透磁率モデルを次に示す。

透磁率(μ)

オーステナイト系ステンレス鋼は磁性がないことが一般使用者の常識となっているが、化学成分と冷間加工率との関連で磁性を帯びることがある。 18-8系ステンレス鋼の冷間加工による透磁率の変化を下図に示す。
SUS304に比べSUS305やSUSXM7が磁性を帯びることが少ないことが判る。
成分的には Cr、Si、Mo、Ti、A1等のフェライト生成元素が多くなるとマルテンサイトに変態する傾向が強く、磁性が強くなる。
一方、C、Mn、Ni、Cu等のオーステナイト生成元素が高いときは、磁性に対し安定する。特に磁性を嫌う場合はSUS305やSUSXM7が使用される。

オーステナイト系ステンレス鋼のねじ部品は一般的に非磁性であるが、冷間加工後に多少の磁性を示すことがあるので、それを特に問題とする場合は、受渡し当事者間の協定によることになっている。

冷間加工による透磁率の変化

(5) 圧造性と耐食性

ねじ部分に使用されるステンレス鋼の代表的鋼種の冷間圧造性と耐食性との関係を下図に示す。

代表的ステンレス鋼圧造性と耐食性

図からわかる通りSUS410(13クロム鋼)SUS430(18クロム鋼)は冷間圧造性は良好であるが、耐食性は18-8鋼に比べ劣る。 一方SUS304やSUSXM7、SUS316の耐食性は良好であるが圧造性が劣る。これらオーステナイト系ステンレス鋼は冷間加工硬化がクロム系ステンレス鋼に比べ大きいためである。

SUS304は18-8ステンレス鋼として最も広く使用されているが、冷間加工硬化性が著しくこの性質を改善するため、Niを多く添加した鋼種がSUS305であり、さらに冷間加工性と工具寿命の延長を狙ってCu(銅)を添加した鋼種SUSXM7となっている。
SUS304→SUS305→SUSXM7と暫時圧造性が改善されていることがわかる。ただし、SUSXM7はSUS304に比べ強度的には若干劣る。SUS316はCr 17%-Ni 10%にMoを2.0~3.0%添加し、耐食性(還元性酸等)を一層改善したものである。

(6) SUS304、SUSXM7の特長

SUS304とSUSXM7を中心にその特長を述べてきたが、これの特長を判りやすく、表に示すと次のようになる。

以上、ステンレス鋼の基本特性とねじ用部品としてSUS304、SUSXM7を中心としてその特性を述べたが、材料の選択(鋼種の選び方)にあたって重要なことは

  • (1) 耐久性
  • (2) 材料の腐食と強度の関係
  • (3) 材料の加工状の難易
  • (4) 市場性(入手の難易、価格)
  • (5) 使用環境

等を充分に考慮して選定することが必要である。

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